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zoom RSS 豊かな田園の生き物を育むために

<<   作成日時 : 2007/07/20 23:34   >>

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午後から博物館協議会があり、委員の方々に昨年度の報告、そして今年度の計画などを聞いて頂き、色々とご意見をもらうことができました。
僕自身も一応記録係として出席させてもらったんですが、色々と今の博物館で行なっている事業への思いやこれまでやってきた事などをざっくばらんに発言させていただきました。
毎回委員の方々からも叱咤激励の言葉などを頂き、さらにウチの博物館がよくなるよう、気が引き締まりました。


で、夜は地域の公民館へ田園の生き物を守る取り組みについての講演に行ってきました。
現在、農林水産省が中心となり、「農地・水・環境保全向上対策」が全国で実施されており、その中で我が滋賀県でも、農業者と共に多様な主体が参加して農村地域の環境を保全する地域活動が実施されています。環境にやさしい農業などの実施項目をクリアすることで、直接支払い制度で補助金がもらえる仕組みになっているのです。
農家、非農家で行なうことなどから実施団体は各字集落で行なう体制がウチの町では主流になっているのですが、その中の実施項目の必須事項で「豊かな田園の生き物を育む取り組み」をしなくてはいけないことになっています。調査や環境学習会の実施などが義務付けられているのです。

とはいうものの、結局は「生態系調査」「学習会」って何をすれば良いのか?という説明や位置づけがきちんとされていないのが現状で、市町や県の農村担当の課などから言われるがままにとりあえずノルマを達成しなくてはという状態が実施団体には広がっていました。

で、最終的に水田地帯の生物の研究をしている僕の所へ話が4月あたりから「なんとかしてくれ」「なんでもええからやってくれ」と依頼が殺到するようになり、これまでに20件を越える実施団体から同じような依頼があったのです。さらに、色々な所で僕が水田生態系の研究をしているというのが広がっており、行政などでも僕のいる博物館に言えば何かやってくれる、ということが広まっていたようです。僕が町職員ということもあり、税金払ってるから使わな損や、と。

さすがにこのままでは単なるノルマの達成だけで、事業自体に何も学習性や環境への配慮がこめられないのではないか、そして僕自身も死にかけることが分かってきたので、危機感を抱いて今回は、色々な実施団体の人を集めて、とりあえずまとめて学習会を開くことになったのです。

およそ50人ほどの方に集まっていただき、田んぼと生き物の関係や現状、調査や保全計画は何のためにするのか、そして調査自体はそんなに難しいものではなく、自分達の足元にある宝物を探すことからはじまるということ、結局田園の生き物を育む取り組みとはどういうことなのか、その主役は誰なのか?とういことを1時間ほど話しました。

要は、自分達のできることから始めれば良い、ということ、そして丸投げでノルマを達成したのでは、まったく自分達のためにならない、ということを伝えたかったのです。もちろん実施団体だけではなく、それを進めている行政自身にも言ったコメントです。担当課長などもおられましたが、これは町職員としてではなく、水田生態系を研究している身として思いきって発言させてもらいました。

意外に思った以上に反応はよく、話も興味深く聞いてもらうことができました。
結局は、その地域の水田生態系を保持していくためには、地元の人の理解なしには進んでいかないので、そこに価値をつけ、皆さんに奮起してもらうための仕掛けを作るのも僕達研究者のすべきことではないかと思っています。こういう研究に関わっている以上、これまでの研究でお世話になった所にも何らかの形でお返しをしなくてはいけないので、職務という範囲でなく、研究者の活動として今後も色々と関わって行くことになるかと思います。

色々と厳しい事なども実施団体や行政にもふっかけることになりますが、せっかくやるなら、ノルマ達成の消化試合でなく、みんなが生き生きとした活動にして欲しい、そういう思いでこれからも関わっていきたいと思います。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
多賀の人は幸せやわ♪
あんたみたいなええ学芸員さんに来てもらえて。
そらねこ
2007/07/21 12:38
多賀の人は幸せやわ♪
あなたみたいなええ学芸員さんがいてくれて。
そらねこ
2007/07/21 12:38
いいっすねぇ〜。
情熱は持ち続けたいですね!時に流されたり投げ出したりしたくなって失いかけることもあるし、これからもそんなことがいっぱいだと思いますが、自分のやっていることを誇りを持って燃え続けたいですね。
R.K
2007/07/21 20:34
学生ボランティアの話でも同じことですが、中央(農水省や環境省、国土何とか省)行政が「良かれ」と考えて行っている事業で、地域性を考慮しないで一律のルールを当てはめたものでは、現場の行政担当者がかなりしっかりしていないと、単なる消化事業になって見せ掛けの成果が残るだけです。国としてやるべき本物の仕事は怠けていて、小手先の社会受け、見栄えのある事業を立ち上げては補助金を薄く広くばら撒き続ける手法に疑念を持っています。「農地・水・環境保全向上対策」事業は私がいる宮崎県日向市でも行われています。地元の農業者に頼まれて情報を集め、行政の説明会に出席してみた印象ですが、(とにかく予算が付いているのでそれを何とかして消化したいので)地域の皆さんがお金を受け取るための条件を説明することに終始していました。事業の理念の説明なんか、行政側からは何もありませんでしたね。
beachmollusc
2007/07/22 04:49
この事業が狙っていることはもちろん良いと思います。しかし、農水省のHPでの説明を見ればわかりますが、結局は農民が老齢化して農耕地の維持管理を自分たちで続けられなくなり、その結果、耕作放棄が急激に拡大する事態が進行していることに対するものです。環境調査や里地生物などはつけたしですね。地域で共同して農耕地、水利システムを維持管理することは伝統的にどこでもやっているはずです。そのシステムの崩壊が目前になっていることはなぜかというと、結局後継者や新規参入がいないからです。農業が農民にとってやりがいのある仕事となるような環境・条件を壊し続けてきた補助金政策、特に減反・休耕田の仕組みが本質的な問題です。ヨーロッパにならわずアメリカの農業をモデルにしてしまったことが根本にあります。今の事業はその政策転換を図るもくろみが背景にあるでしょう。

それはともかく、少しでも投入される税金が生きるような方向になって欲しいですね。
beachmollusc
2007/07/22 05:04
>そらねこさん。
この前はありがとうございました。
そら、Y町もそらねこさんがいてくれるから、みんな幸せですよ♪

>R.Kさん。
やっぱり、自分のやってきたこと、そしてこれからやっていくことには、ある程度フレキシブルな信念を持ってやって行く事が大事だと思います。今回のは僕の専門にモロにカブってくるのでいてもたってもいられない状況で、こういうことをやりました。R.Kさんもいつもの情熱と信念を持ち続けてくださいね!!

>beachmolluscさん。
要は、農業への誇りと楽しさをこの事業でみなおしてもらうことが私は大事だと思っています。農業の傍らで田園生態系が成立してきたのには、楽しいと思える一面が農業にないと、ここまで維持されてこなかったんですから。色々と仕組みにも問題はあるかと思いますが、せめてウチの町だけでもまずは水田生態系の専門家として私ができることはしていきたいと思っています。
シゲ。
2007/07/27 23:45
>要は、農業への誇りと楽しさをこの事業でみなおしてもらうことが私は大事だと思っています。

シゲさん、このコメントに100%同意です。現場でこの事業の行政事務を担当する人たちの頭の中にこのような考えを持っている人が少しでも多くいてくれれば、と望むしかありません。また、農業を営む人たちこそが自分達の生活の豊かな環境を守り、育む意欲と誇りを持ち続けて欲しいですね。
beachmollusc
2007/07/29 06:12

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